こんにちは。行政書士の遠藤です。
建設業許可を保有する企業様から、実務上よくいただくご質問の一つに、「会社の決算期(事業年度の末日)を変更した場合、何か届出は必要ですか?」というものがあります。
例えば、「2月決算から4月決算に変更した」という場合、商号変更や役員変更のように、30日以内に「変更届出書(様式第二十二号の二)」を提出する必要があるのでしょうか。
結論からお話しますと、「決算期の変更」のみを理由とする「変更届出書」の提出は不要です。
しかし、「一切届出をしなくてよい」という意味ではないため、注意が必要です。本記事では、建設業許可における決算期変更の正しい手続きと、そこに潜む実務上の論点について解説します。
変更届出の対象に含まれていない
建設業許可業者が「変更後30日以内」に提出を義務付けられている「変更届出書(様式第二十二号の二)」の対象事項は、法律で定められています。
【30日以内に届出が必要な主な事項】
- 商号または名称
- 営業所の名称・所在地(新設・廃止を含む)
- 資本金額
- 役員、代表者
- 支配人
お気付きの通り、このリスト に「決算期」や「事業年度の末日」は含まれていません。
これらの多くは「登記事項証明書(登記簿謄本)」に記載されるような、許可の根幹に関わる情報です 。一方、「決算期」は登記事項ではなく、会社の「定款」で定める事項です。 このため、行政庁は「決算期が変わった」という事実そのものを、直ちに報告すべき事項とは見なしていないのかもしれません。
報告が不要、なわけではない。
では、行政庁はいつ、どのようにして決算期の変更を把握するのでしょうか。
答えは、「毎事業年度終了後4ヶ月以内」に提出する「決算変更届(営業年度終了報告書)」 にあります。
「決算変更届」の提出の際には、工事経歴書や財務諸表 とともに、いくつかの添付書類が求められます。東京都の建設業許可の手引きでは、必要書類一覧の中に、以下のような記載があります。
「定款(又は変更の議事録)※既に提出の内容から変更がある場合のみ」

法人の決算期は「定款」の記載事項です。したがって、決算期を変更するということは、株主総会等で「定款変更」の決議を行っているはずです。
つまり、建設業法上の正しい手続きは以下のようになります。
- (変更時)決算期を変更しても、即時の届出は行わない。
- (変更後)変更後の新しい決算期(あるいは変則的な決算期)が終了するのを待つ。
- (届出時)その決算期末から4ヶ月以内に「決算変更届」を提出する。
- その際、添付書類として「変更後の新しい定款」の写し(または変更の事実がわかる株主総会議事録)を提出する 。
この「決算変更届」の提出をもって、行政庁は「定款が変更されたこと=決算期が変更されたこと」を正式に把握し、登録データを更新します。
経営事項審査(経審)を受ける場合は
もし貴社が公共工事の入札のために「経営事項審査(経審)」を受けている場合、上記とは別に、注意すべきポイントがあります。
それは、「経審は12ヶ月の決算書しか分析しない」という厳格なルールです 。
東京都(行政庁)への「決算変更届」は、前述の通り「14ヶ月分」や「2ヶ月分」の変則的な財務諸表でも受理されます。しかし、経審の「経営状況分析」(Y点)は、企業比較の公平性を保つため、「12ヶ月」という共通の物差しでしか評価しません 。
もし貴社が14ヶ月の決算書を作成した場合、経審の分析機関(CIACなど)は、その14ヶ月のデータを受け付けません。経審申請のためには、変則決算期間の末日から遡って「12ヶ月間」を切り出した、別の財務諸表を作成し直す必要があります 。
まとめ
- 決算期を変更しても、即時(30日以内)の「変更届」は不要。
- 報告は、次回の「決算変更届」の際に、「変更後の定款」または「変更の議事録」を添付して行う。
- 決算期変更に伴う「変則決算」(例:14ヶ月や2ヶ月)で決算変更届を提出する。
- 経審を受ける場合は、12ヶ月ルール への別途対応が必須。
決算期の変更は、建設業法の手続き以上に、会計処理や経審への影響が大きいかもしれません。ご不明な点は、建設業実務に精通した行政書士にご相談ください。

