
「決算が終わったけれど、建設業許可で何か手続きは必要?」



「経営事項審査(経審)を受ける場合、決算変更届の作り方が違うと聞いたけど…」
東京都で建設業許可を取得し、事業を営んでいらっしゃる事業者様の中には、このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
建設業許可は、取得して終わりではありません。許可を維持するためには、事業年度が終了するごとに必ず「決算変更届(事業年度終了報告書)」を提出する義務があります。この手続きを怠ると、5年に一度の許可更新ができなくなるだけでなく、罰則の対象となる可能性もある非常に重要な手続きです。
さらに、公共工事の入札に参加するために経営事項審査(経審)を受ける事業者様にとっては、この決算変更届の作成方法が評点を左右する重要な鍵となります。
この記事では、建設業許可専門の行政書士が、東京都の建設業許可業者様に向けて、決算変更届の作成方法をゼロから解説します。
決算変更届とは? 建設業許可業者に課せられた義務
まずは、決算変更届がどのような手続きなのか、その基本情報を確認していきましょう。
決算変更届の提出は建設業者の義務
決算変更届は、建設業法第11条第2項で定められた、建設業許可業者に課せられた法律上の義務です。
建設業法第11条2項
許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、許可行政庁に提出しなければならない。
簡単に言えば、「毎年の決算内容や工事実績などを、許可を受けた行政庁(東京都)に報告してください」という手続きです。この届出により、許可行政庁は建設業者が許可基準を維持できているか、どのような経営状況にあるかなどを継続的に把握します。
提出期限は「事業年度終了後4か月以内」
決算変更届の提出期限は、事業年度が終了してから4か月以内です。
例えば、3月決算の会社であれば、4月、5月、6月、7月の4か月間、つまり7月31日までに提出する必要があります。決算変更届の作成には、確定申告時に作成した決算書が必要ですから、タイトなスケジュールで進めることになります。
4ヶ月の期限を過ぎて提出した場合、東京都の窓口で受理はされますが、口頭で注意を受けることがあります。何よりも、後述する許可更新などの手続きに大きな影響を及ぼすため、必ず期限内に提出しましょう。
提出先と提出方法


東京都知事許可の場合、提出先は以下の通りです。
提出先 東京都庁 第二本庁舎3階南側 東京都都市整備局 市街地建築部 建設業課
窓口 2番窓口
提出方法 窓口持参、郵送、電子申請
決算変更届は、手数料がかからないため、郵送での提出も可能です。ただし、書類に不備があると受理されず、返送されてしまうため、内容を十分に確認する必要があります。 また、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)を利用した電子申請も可能になっています。
決算変更届を提出しないとどうなる?
もし決算変更届を提出しなかった場合、以下のようなペナルティが発生します。
5年に一度の許可更新申請を行う際、5期分すべての決算変更届が提出されていることが受理の絶対条件です。1期分でも未提出の届出があれば、更新申請は受理されず、許可は失効してしまいます。
新たな業種を追加したり、一般建設業から特定建設業へ(またはその逆へ)切り替えたりする申請も、決算変更届が未提出の状態では受理されません。
建設業法第50条の罰則規定により、「六月以下の懲役又は百万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。実際に罰則が適用されるケースは稀ですが、法律上のリスクがあることは認識しておく必要があります。
公共工事の入札に参加するための経営事項審査は、決算変更届を提出していることが前提となります。
このように、決算変更届の提出は、建設業許可を維持し、事業を継続していく上で不可欠な手続きなのです。
【経審を受けない場合】の決算変更届 – 必要書類と作成方法
ここからは、具体的な書類の作成方法について解説します。まずは、経営事項審査(経審)を受けない場合の決算変更届です。比較的シンプルな報告が中心となります。
必要書類一覧
経審を受けない場合、主に以下の書類が必要となります。様式は東京都都市整備局のウェブサイトからダウンロードできます。
| 書類名 | 様式番号 | 備考 |
|---|---|---|
| 変更届出書(決算報告用) | 別紙8 | 届出の表紙となる書類 |
| 工事経歴書 | 様式第二号 | 事業年度内に行った主な工事の実績を記載 |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 様式第三号 | 過去3期分の業種別工事高を記載 |
| 財務諸表(法人の場合) | 様式第十五号~ | 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表、附属明細表 |
| 財務諸表(個人の場合) | 様式第十八号・十九号 | 貸借対照表、損益計算書 |
| 事業税の納税証明書 | – | 都税事務所発行のもの |
| 使用人数(変更があった場合のみ) | 様式第四号 | 従業員数に変更があった場合に提出 |
| 定款(変更があった場合のみ) | – | 事業目的や資本金などに変更があった場合に提出 |
| 健康保険等の加入状況(変更があった場合のみ) | 様式第七号の三 | 加入状況や従業員数に変更があった場合に提出 |
各書類の作成ポイント
① 変更届出書(決算報告用)(別紙8)
届出の顔となる書類です。許可番号、商号、代表者名、事業年度などを正確に記入します。添付した書類の番号に〇を付けます。
② 工事経歴書(様式第二号)
1年間の工事実績を記載する、決算変更届の核となる書類の一つです。
許可を受けている業種ごとに作成します。実績がない業種も「実績なし」として1枚にまとめて作成・提出が必要です。
また、経審を受けない場合は、その事業年度に完成した主な工事を10件程度、請負代金の額が大きいものから順に記載します。元請・下請の別、注文者、工事名、現場の場所、配置技術者、工期、請負代金の額などを記入します。それに続けて、主な未成工事について、請負代金の額の大きい順に記載します。
消費税については、税込または税抜で記載しますが、確定申告時に作成した決算書が税抜であれば税抜、税込であれば税込で作成します。(税込・税抜は決算報告書を通じて統一する必要があります)
工事名は「〇〇邸新築工事」「△△ビル改修工事」のように、内容が具体的に分かるように記載します。個人邸の場合は「A邸」のようにプライバシーに配慮しましょう。
③ 直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)


過去3期分の業種ごとの完成工事高を一覧にした書類です。
1枚の様式に全業種をまとめて記載します。当期分、前期分、前々期分の3期について、許可業種ごとに元請・下請を分けて工事高を記入します。消費税については、工事経歴書と同様、財務諸表や他の書類と合わせます。
各業種の合計金額が、後述する財務諸表の「完成工事高」と一致している必要があります。また、工事経歴書の合計金額とも一致させる必要があり、各書類間の整合性が重要です。
④ 財務諸表
税務申告で作成した決算書を、建設業法で定められた様式に書き換えて作成します。
法人は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表など、個人は貸借対照表、損益計算書を作成します。
財務諸表のポイントは「勘定科目」です。税務申告用の決算書とは勘定科目の分類が異なる部分があるため、「建設業法施行規則」で定められた科目に振り分けて転記する必要があります。また、経理処理が税抜方式の場合は、税抜で作成することも可能ですが、他の書類と統一する必要があります。(経審を受けない場合は、税込で作成することが多いです)
特に「完成工事原価報告書」の作成は不要ですが、損益計算書の「完成工事原価」の内訳(材料費、労務費、外注費、経費)は正確に算出する必要があります。
⑤ 事業税の納税証明書
主たる営業所の所在地を管轄する都税事務所で取得します。
- 法人の場合 「法人事業税」の納税証明書
- 個人の場合 「個人事業税」の納税証明書
税務署が発行する「国税」の納税証明書と間違えないように注意が必要です。また、証明書に記載される事業年度が、届出対象の事業年度と一致しているか確認しましょう。
【経審を受ける場合】に注意すること
公共工事の入札に参加する事業者が受ける経営事項審査(経審)。この経審を受ける場合の決算変更届は、単なる報告書類ではなく、会社の経営状況を評価してもらうための申請書類という側面が強くなります。そのため、経審を受けない場合と比べて、作成のルールが格段に厳しくなります。
主な違いは?
経審を受ける場合の決算変更届が、受けない場合と大きく異なる点は以下の通りです。
経審では正確な経営数値を評価するため、工事経歴書、直前3年工事施工金額、財務諸表のすべてを税抜で作成するのが大原則です。(※免税事業者の場合は税込で作成)
完成工事高を正確に評価するため、記載する工事の選定ルールが細かく定められています。
経営状況分析(Y点)の評点に直結するため、建設業会計に則った科目分類が求められます。
【経審用】工事経歴書(様式第二号)の作成方法


経審用の工事経歴書は、評点(特にX1点:完成工事高)に直接影響するため、記載ルールが厳格化されています。
前提として、消費税は税抜で記載します。
次に書くべき工事ですが、まず、元請工事について、その業種の元請完成工事高合計額の7割を超えるまで、請負代金の額が大きい順にすべて記載します。次に、最初に記載した以外の元請工事および下請工事を、その業種の完成工事高総額の7割を超えるまで、請負代金の額が大きい順に記載します。
ただし、軽微な工事(税込500万円未満等)は、上記ルールに関わらず10件を超えて記載する必要はありません。
【経審用】財務諸表は何が違う?
経審用の財務諸表は、登録経営状況分析機関が行う経営状況分析(Y点)の基礎資料となり、評点を大きく左右します。
消費税は税抜で作成します。
また、経審を受けない場合との大きな違いとして、兼業事業の売上高がある場合は、経営状況分析の際、兼業事業売上原価報告書を作成します。 建設業以外の事業(不動産業など)がある場合、その売上と原価を建設業の完成工事高・完成工事原価と明確に分けて計上します。決算変更届で提出する書類ではありませんが、経営状況分析時に必要となりますので注意が必要です。
作成時の重要ポイントと間違いやすい箇所
ここでは、長年多くの事業者様の決算変更届を作成してきた行政書士の視点から、作成時に特に注意すべきポイントと、多くの方がつまずきやすい間違いやすい箇所を解説します。
全書類で絶対に守るべき3つの重要ポイント
各書類間の金額の整合性を徹底する
これは最も重要かつ、間違いの多いポイントです。以下の金額は、必ず一致させる必要があります。
工事経歴書(業種ごと)の合計金額 = 直前3年工事施工金額(当期分)の各業種金額
直前3年工事施工金額(当期分)の合計金額 = 財務諸表(損益計算書)の完成工事高
工事経歴書、直前3年工事施工金額、財務諸表の金額が一致していないと、補正指示の対象となります。
消費税の処理を統一する
経審を受けない場合は「税込」(税抜でも可)、受ける場合は「税抜」が原則ですが、どちらの場合でも、提出するすべての書類(工事経歴書、直前3年工事施工金額、財務諸表)で処理方法を統一しなければなりません。一部だけ税込、一部だけ税抜といった混在は認められません。
書類の作成は以外に大変。
ここまでお読みいただき、「思ったより複雑で大変そうだ…」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。決算変更届は、自社で作成・提出することも可能ですが、専門家である行政書士に依頼することで、多くのメリットを得ることができます。
本業に集中できる【時間的メリット】
決算変更届の作成には、書類の収集、数値の集計、様式への転記、役所への提出など、多くの時間と手間がかかります。特に、経審を受ける場合の厳密な書類作成は、専門知識がないと膨大な時間を要します。 行政書士に依頼すれば、これらの煩雑な手続きをすべて代行します。事業者様は、書類作成に頭を悩ませることなく、安心して本業である建設事業に集中することができます。
ミスのない正確な書類で、手戻りを防ぐ【確実性のメリット】
決算変更届の作成には多くの間違いやすいポイントが存在します。書類に不備があれば、役所から何度も補正を指示され、そのたびに時間と労力が奪われます。最悪の場合、期限に間に合わず、許可更新ができないという事態にもなりかねません。 建設業許可を専門とする行政書士は、法律や様式、審査のポイントを熟知しています。ミスのない正確な書類を迅速に作成し、スムーズな受理を実現します。
決算変更届は許可維持の生命線
今回は、東京都の建設業許可における決算変更届について、その基本から経審を受ける場合との違い、作成のポイントまで詳しく解説しました。
- 決算変更届は、事業年度終了後4か月以内に提出が必要
- 提出を怠ると、許可の更新ができなくなる
- 経営事項審査(経審)を受ける場合は、必ず税抜で作成
- 各書類間の金額の整合性など、間違いやすいポイントに注意
決算変更届は、年に一度の少し面倒な手続きかもしれません。しかし、これは建設業許可という重要な経営資産を守り、事業をさらに発展させていくための生命線とも言える重要な手続きです。
この記事が、皆様の適正な許可維持の一助となれば幸いです。もし、決算変更届の作成や経営事項審査について、少しでもご不安やお困りのことがございましたら、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。初回のご相談は無料にて承っております。
自己紹介


行政書士・エコアクション21審査員補の遠藤 諒(えんどう りょう)です。青梅市に行政書士事務所を開設。東京、神奈川、埼玉、山梨を業務範囲としています。
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