
建設業許可の新規申請や更新、変更届の際に必ず提出が求められる「別紙一 役員等の一覧表」。
この書類は、一見すると会社の役員をリストアップするだけの単純なものに見えるかもしれませんが、許可の要否を判断する上で重要な役割を担っており、その記載内容や対象者の範囲にはルールが存在します。
「取締役以外に誰を載せればいいのだろう?」 「5%以上の株主も記載が必要って本当?」 「常勤と非常勤の区別はどう判断するの?」
こうした疑問について、建設業許可を専門とする行政書士が、「役員等の一覧表」の目的と重要性から、記載すべき人物の範囲、項目ごとの具体的な書き方、注意点等を解説します。
「役員等の一覧表」の目的とは
経営体制の透明化と欠格要件の審査
「役員等の一覧表」の目的は、許可行政庁(東京都)に対して、申請者の経営体制を明確に示し、その構成員が建設業を営むにふさわしいかどうかを審査させることにあります。
建設業法では、暴力団関係者や過去に法律違反を犯した者などを排除するため、欠格要件が厳しく定められています。行政庁は、この一覧表に記載された人物一人ひとりについて、この欠格要件に該当しないかを確認します。
つまりこの書類は、「私たちの会社は、これだけのメンバーで健全に経営を行っています」という公式な宣言書であり、許可審査の土台となるのです。
提出が必要な主な手続き
この様式は、主に以下の手続きで提出が求められます。
- 新規の建設業許可申請
- 5年ごとの建設業許可更新申請
- 役員等の変更届(就任、退任、代表者の変更など)
特に役員の就任・退任があった場合は、30日以内に変更届としてこの様式を提出する義務があるため、注意が必要です。
誰を載せる?「役員等」に含まれる人物の範囲
この書類作成で最も重要なのが、「誰を記載すべきか」という点です。建設業法でいう「役員等」は、一般的な会社の「役員」よりも範囲が広いため、注意深く確認する必要があります。
法人の場合
株式会社や合同会社などの法人の場合、以下の人物が記載対象となります。
① 取締役(株式会社、特例有限会社)
- 代表取締役、取締役全員が対象です。
- 社外取締役も含まれます。
② 業務を執行する社員(合同会社、合名会社、合資会社)
- 持分会社における業務執行権を持つ社員(業務執行社員)全員を記載します。
③ 理事等(協同組合など)
- 法人格のある組合の場合は、理事全員が対象です。
④ 相談役・顧問
- 「取締役」などの正式な役職名がなくても、法人に対して取締役と同等以上の支配力を有すると認められる者は記載が必要です。例えば、会長職を退いた創業者が相談役として経営に大きな影響力を持っている場合などが該当します。判断に迷う場合は、許認可庁に確認しながら進めるのも手です。
⑤ 5%以上の議決権を持つ個人株主(株主等)
総株主の議決権の5%以上を有する個人株主がいる場合、その株主も「役員等」として記載しなければなりません。
- 出資の総額の5%以上に相当する出資をしている個人が記載対象です。
- 法人が株主の場合は記載不要です。
個人事業主の場合
- 事業主本人を記載します。
記入例 項目別・正しい書き方
次に、様式の各項目の具体的な書き方を、東京都の記入例を参考に解説します。

氏名
法人の役員:
登記事項証明書(履歴事項全部証明書)に記載されている通りの字体で、氏名を正確に記入します。旧字・異体字などもそのまま転記してください。
個人事業主:
住民票に記載されている通りの字体で、氏名を正確に記入します。
役名等
その人物の役職を具体的に記入します。5%以上の個人株主の場合は、「株主等」と記入します。取締役であり、かつ株主でもある場合は、「取締役」として記載します。
例:代表取締役、取締役、相談役、顧問、事業主、支配人
常勤・非常勤の別
その人物が常勤か非常勤かを区別して記入します。
常勤:原則として、主たる営業所に毎日、所定の時間勤務している状態を指します。建設業許可における経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)は、この常勤性が絶対条件です。
非常勤:上記の常勤に該当しない場合です。
相談役、顧問、株主等については、常勤・非常勤の別を記載する必要はありません。空欄のままで大丈夫です。
他の書類との連携と、絶対に避けたい注意点
「役員等の一覧表」は単独で完結する書類ではありません。他の申請書類と密接に関連しており、整合性が取れていないと審査で指摘されます。
他の重要書類との関連性
様式第十二号「許可申請者の調書」
「役員等の一覧表」に記載した人物(相談役、顧問、株主等を除く)全員分について、欠格要件に該当しないことを誓約するための「調書」を一人一枚ずつ作成・添付する必要があります。この一覧表に記載漏れがあると、必要な調書も不足することになり、申請は受理されません。
様式第七号「経営業務の管理責任者等証明書」
経営業務の管理責任者(経管)に就任する人物は、必ずこの一覧表に常勤の役員(法人の場合)または事業主(個人の場合)として記載されている必要があります。
間違いやすいポイントと注意点
5%以上の個人株主の記載漏れ
最も多い不備の一つです。申請前に必ず株主名簿を確認し、該当者がいないかチェックしてください。
登記事項証明書との不一致
役員の氏名、役職、就任年月日などが、最新の登記事項証明書の内容と異なっているケースです。法人役員に変更があった場合は、まず法務局で登記変更を行い、その上で建設業許可の変更届を提出する必要があります。
常勤性の判断ミス
他の会社の常勤役員を兼務している場合などは、原則として常勤とは認められません。安易に「常勤」と記載すると、虚偽申請とみなされるリスクがあります。
経営の根幹を示す重要書類として正確な作成を
今回は、「別紙一 役員等の一覧表」について、その重要性から具体的な書き方までを掘り下げて解説しました。
「役員等の一覧表」は、経営体制の健全性を示し、欠格要件を審査するための基本書類です。記載対象は取締役だけでなく、相談役や5%以上の個人株主など、建設業法独自の広い範囲に及びます。
また、氏名や役職は登記事項証明書と完全に一致させ、常勤・非常勤の別も実態に即して正確に記載する必要があります。書類は「調書」など他の申請書類と連動しており、記載漏れは申請全体の不備につながりますので、記載すべき人物を漏れなくリストアップし、正確な情報で作成することを心がけてください。
